高校生に伝えたいほんとうの情報科学

人工知能と機械学習

人間と会話ができるロボット、プロ棋士に匹敵するレベルの将棋コンピューター、クイズ番組でチャンピオンに勝利したコンピューター、さらに、内蔵コンピューターのおかげで自動走行が可能になった車。このようにどんどん賢くなっていくコンピューターは、「人工知能・機械学習」とよばれる情報技術によって支えられています。

「人工知能」という言葉は、1950年代に提唱されたといわれています。当時は、人間の思考パターンをプログラムしていけば、高度な知能を持つコンピューターが実現できると考えられていました。しかし、人間の思考パターンは無数にあり、あらゆる状況に対するパターンを列挙することはとうてい不可能であることがわかり、このアプローチは頓挫してしまいました。

その後、すべてのパターンをあらかじめプログラムするのではなく、例をいくつか教え、そこから他のパターンを自動的に類推させる「機械学習」の研究が盛んに行われるようになりました。この機械学習アプローチによって、現実的な時間である程度実用的な人工知能が実現できるようになったのです。

最近は、身近なところで人工知能がどんどん利用されるようになってきています。たとえば、ショッピングサイトでの購買履歴をもとにおすすめの商品を推薦したり、遺伝子の情報から病気のリスクを評価したりという場面で、最先端の人工知能技術が活躍しています。

今後、いろいろな種類のセンサーが大量にネットワークにつながり、SNSメッセージ、ウェブの検索履歴、写真、ビデオなどのサイバー情報だけでなく、医療カルテ、遺伝子、地震、気象、天体、電力、株取引、電子マネー、工場での生産履歴など、基礎科学からビジネスまで膨大な量の実世界のデータが蓄積されていきます。

このような、もはや人間が処理できないほどの大量のデータから、ベクトル・行列、微分・積分、確率・統計などの数学と、コンピューターのハードウェアやソフトウェアの最先端技術を駆使し、未だ知られていない新たな知識を掘り起こせる学習手法を開発することが、これからの人工知能・機械学習の研究の目標です。

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