高校生に伝えたいほんとうの情報科学

アルゴリズムびっくり箱

有名な数学者ガウスには、小学生の頃の愉快な逸話があります。生徒に時間のかかる課題を与えて教室から出ようとした教師が、1から100までの数を足すようにと問題を出したのですが、ガウスはすぐに回答したので、教室から出られなくなったというのです。

もちろん、これは等差数列の和の公式に気がついて、100に101をかけて2で割ればすぐに答が出ます。高校生なら、21、22、23……2100までの総和を求めることも、等比数列和の公式でわりと容易に計算できるでしょう。

ガウスの逸話は、同じことを計算するのでも、方式(アルゴリズム)が違えば効率が極端に違うことを示しています。教師が小学生には30秒では計算不可能だと思ったことが、可能になったのですから。

ここで問題です。では、2100を計算するのに必要な、2のべき乗の整数の乗算回数は何回でしょうか? 99回でできるのは確かですが、もっと少なくすることができます。(このようなことを考えるのが好きな人は、情報科学を楽しく追及できます。)

情報科学が社会基盤となったいまは、独創的なアルゴリズムによって新しい技術が創造され、これまでの不可能を可能にしています。

たとえば、ウェブ上の情報を探し出すインターネット検索は、20世紀の大発明のひとつですが、以前のやり方では、ウェブページ中に含まれている検索キーワードの数や割合などを活用して、どのページが最も検索結果にふさわしいかを順序づけて回答していました。

しかしグーグルの開発者は、たくさん参照されているページこそ価値が高いと考え、ウェブページ間の参照関係(リンクのグラフ構造)に着目したのです。そして、膨大な数のページの参照関係を探索・計算可能にしたのが、ランダムウォークというアルゴリズムでした。この方法を採り入れた検索エンジンは、まさしくユーザーがほしい情報を示すことができたので、一躍人気の高い検索エンジンになっています。

これは、ユーザーがたどるウェブページのリンクに着目するという新しいアイデアと、データを大量に収集し、実用的な時間で計算可能にした斬新なアルゴリズムによって、ブレークスルーをもたらした例です。

グラフの理論そのものは情報科学の一角をなしていて、古くは地図の4色塗り分け可能性の証明から、インターネット時代のセキュリティを保証する公開鍵暗号(鍵が公開されてる暗号って不思議ですよね)まで、多彩な情報数理の問題の解決に用いられています。
 社会を変えるようなアルゴリズムは、研究者・開発者の自由で柔軟な発想、デザインと解析の卓越した力の産物です。ちょっと、興味がわいてきたでしょうか?

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