益田研究室 助手さんアンケート


回答者:河野健二助手

Q 現在、どのような研究をなさっていらっしゃるのですか?

システムソフトウェアとよばれる分野の研究をしています.システムソフトウェ アの目的は,裸の計算機を適切に抽象化・仮想化して,アプリケーションやユー ザにとって利用しやすい環境を提供することにあります.オペレーティングシ ステム(OS)を代表に,データベースシステムやウィンドウシステムもシステム ソフトウェアに入ります.Web サーバなども広義ではシステムソフトウェアに 入ります.

益田研では,特に分散環境で必要とされるシステムソフトウェアの研究に力を 入れています.インターネットが流行しているからというわけではなく,かれ これ 10 年以上も分散システムの研究を継続して行ってきました.現在の分散 システムの多くは,UNIX などの古典的な OS の提供する抽象化の上にむりや り作り上げられていて,あちこちがひずみながらも何とか頑張っている状態で す.そろそろカーネルの提供する抽象化・仮想化を考え直すべき時がきた,と いうのがわれわれの認識です.このような認識のもと,新しい OS のコンセプ トを生み出すことを目標に研究を進めています.

Q 研究室で行われているプロジェクトについて教えて下さい。

現在進行中のプロジェクトはいくつかありますが,もっとも力を入れているの は,"A Secure OS for World-Wide Network" というプロジェクトです.この プロジェクトでは,インターネットなどの開放的な環境であっても安全性が保 証できるような OS の研究・開発を行っています.これまでの OS では,あら かじめ登録されたユーザのみが利用する,いわば閉じた環境を想定していまし た.そのため,インターネットのような誰もが利用できる,開放性の高い環境 には向いていません.巷でもコンピュータウィルスによる被害などが話題になっ ています.こういうセキュリティの問題を回避するために,OS の基本設計か ら見直していこうというのがプロジェクトのねらいです.

このプロジェクトは立ち上がったばかりで,やっと基本部分の設計ができあがっ たところです.今のところ,システムの外部からダウンロードされた,プラグ インなどの信頼性の低いコードを安全に実行する枠組みを作っています.従来 の OS の提供するプロセスの概念を変更し,資源割り当ての単位としてのプロ セスと保護ドメインとしてのプロセスとを明確に分離し,細粒度保護ドメイン という抽象化をプロセスに導入しました.これによって,悪意のあるプラグイ ンでも安全に実行できるようになります.実験用のプロトタイプが Sparc プ ロセッサと Intel x86 プロセッサの上で動き始めていて,これから評価をし ていこうというところです.

このプロジェクトから派生して,機能拡張のできる大規模 web サーバの実装 なども手がけています.また,分散オブジェクトシステムの研究や携帯型計算 機用のファイルシステムの開発なども行っています.

Q 所属していらっしゃる研究室ならではの特徴がありましたら、教えて下さい。

新しい OS をインストールして,カーネルをハックして遊んでいても誰もおこ りません.マシンパワーが余っているので一人で 3 台ぐらい使っても誰も文 句を言いません.わがままな院生だと一人で 6 台使っていた,なんてことも ありました.

Q 研究室を目指す学生にひとことお願い致します。

益田先生が今年度一杯で停年を迎えられ,益田研はなくなっちゃうんですけど. 一般的な話として,専門に入るまでは数学とか物理とかそういうものをきちっ と勉強しておいて下さい.コンピュータなんて専門に入ってから勉強すれば十 分ですし,学部の間はシステムソフトウェアなんかよりもプログラミング言語 やデーターベースをきちんと勉強しておいてもらいたいですね.

Linux とかのインストールや設定だけが楽しくてしょうがない,という人は優 秀な管理者ですが,あまり研究向きではありません.研究って,人の作ったシ ステムの使い方を覚えることではなくて,自分の頭で新しいものをうみだすこ とですから.

Q 情報社会についてひとことお願い致します。

「情報」という言葉の上っ面にだまされないで,物事の本質を見極められるよ うに人になって下さい.こんな偉そうなこと言っていいのかな?

 

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Last updated on 29 May, 1999