今後のコンピュータサイエンスの大きな課題である大規模並列分散処理(人工 知能や離散事象シミュレーションなどの大規模並列分散記号処理や、大規模並 列分散数値処理の研究を含む)では、従来のフォン・ノイマン型のコンピュー タとその上のソフトウェア開発の研究と異なり、並列計算の基礎的なモデル、 それに基づくプログラミング言語のコンパイラやランタイムシステム、また、 効率よく実行するアーキテクチャ、さらにはプログラム開発/デバッグのため のプログラミング環境らの研究が急務である。また、それらのシステムでは扱 われるデータや計算の量が膨大かつ分散的になるため、「計算の過程/結果」 を人間に伝達するグラフィカルユーザインターフェース(GUI)による情報伝達 の研究も重要となる。 当研究室では、このような
  • 「超並列分散ソフトウェア」
  • 「並列計算モデル」

をキーワードに、並列分散言語(型推論、設計、意味論、 処理系)、ユーザインターフェースなどを主な研究テーマとしている。また今 後は、WWW で接続されている全世界の計算・データ資源を有効に利用するため の分散プログラミングの研究を行なう予定でもある。

超並列計算機上でのプログラミング言語では、我々は高い並列度を活用でき るような表現力を持つ計算のフレームワークを追及し、それに基づき大規模並 列処理システムを構築し、分散シミュレーション・遺伝子情報処理・自然言語 理解などの問題に適用することを目標としている。
より具体的には、並列オブ ジェクト指向計算、リフレクション(自己反映計算)、並列制約計算の理論的枠 組を構築し、それに基づくプログラミング言語設計、さらに実際の処理系の高 速実装技術の開発を重要課題としている。現在までに、
  • 並列オブジェクト指向言語 ABCL/1、ABCL/f
  • 自己反映並列/分散オブジェクト指向言語 ABCL/R3、
  • 並列分散言語 Schematic
  • 並列制約解消言語 PARCS

などの言語を設計し、それらの型システム・プログラム解析・プログラ ム合成/変換/検証などの理論面の探究および、並列計算機やワークステーショ ン・クラスタ上への高速の処理系の開発を行なってきた。

ABCL/1 およびリフレクション機構を導入した ABCL/R3、 の処理系は Unix ワークステーション上で作動し、世界の研究機 関に配布されている。さらに、EM-4(電総研)、富士通 AP-1000+ といった最先 端の高並列計算機上への ABCL/ST、ABCL/f、Schematic、PARCS といった並列オブジェクト指向/制約言語の実装が完了している。 GUI では、他研究室と合同研究グループを造り、アプリケーション内の 抽象データと画面上の表示の宣言的対応関係を記述することのみにより容易に GUI を実現する TRIP システム、 ユーザの与えた例から自動的に GUI を作成する TRIP3 システム、並列計算を視覚化するアルゴリズムアニメーションシステム などを開発した。
平成8年4月現在の米澤研究室の陣容は、教授(米澤)、助手(小林[当時。現在 は田浦])、秘書、博士課程8名、修士課程4名、外国人共同研究者2名、学部生 (人数未定)となっている。研究室の設備は、富士通社の AP1000 と Intel 社 の iPSC/2 ハイパーキューブ型計算機といった並列計算機の他、ミリネットで 接続されたワークステーションクラスタや Sun 社の大型サーバ Ultra Enterprise 5000 などがある。さらに多数のワークステーションを保有し、全 ての計算機は研究室専用のネットワークにより接続され、計算機資源/環境共 有して作動している。

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<vu@is.s.u-tokyo.ac.jp>

Last updated on Thursday, 3 1997