[専門分野]
計算言語学自然言語処理機械翻訳
[研究者の心構え]

私の専門とする分野は、計算機科学、言語学、心理学、認知科学、人工知能といっ た、さまざまな学問分野が関連する境界性の強い研究分野です。日本語、英語と いった言葉を計算機で処理すること、あるいは、言葉で表現される情報を取り扱う ための理論を構築することを目的とすることからの当然の帰結でしょう。 ただ、このような境界性の強い研究分野の研究を行なう研究者には、つねに 2つの、相反する危険性があります。一つは、自分自身の研究が拡散し、 いわば、「鳥なき里のこうもり」になってしまうこと、もう一つは、逆に 自分の研究分野に固執して、他の学問分野の知見を無視する偏狭に陥ること です。他の分野の成果にオープンな態度で、なおかつ、自分自身の方法論 を確立することは、非常に困難なことですが、いつもそうありたいと考えて います。 もう一つは、人間の言語活動の計算モデルを構築するという研究分野は、 最終的には人間の知能という大変に複雑な対象のモデル化とつながっています。 この対象は、いわば、人間が自覚的に科学的思考を始めたころからの、ギリシャ 哲学以来のテーマであり、ちょっとしたアイデアでは解決できないことは自明です。 したがって、この分野での研究をする人は、謙虚で、かつ、粘り強い態度が 必要かと思っています。

[最近の話題]

言語を計算論的な立場から研究するという態度は、1950年代のN.Chomsky らの研究にその萌芽がありますが、約50年たって、ようやくその形が定まって きたようで、言語の計算論的な研究の基礎ができたといって良いでしょう。 この基礎の確立には、言語学よりも、計算機科学からの計算に関する形式理論 の発展が大きな寄与をしたと思います。

このような基礎の確立とともに、この数年の間に言語処理に関する環境が 急速に変化し、(インターネットの浸透によって)膨大な量のテキストが計算機 で処理可能な形で蓄積されてきました。したがって、分野の理論的な整備だけでなく、 実際的な計算機実験が簡単にできるようになり、理論の構築とその経験的な実証と のサイクルがうまくかみあう状況になった、と思っています。つまり、本格的な 科学になる準備が整ったといって良いでしょう。

また、一方では、インターネット上に流通するテキスト情報を有効に検索・参照 する情報検索の技術、あるいは、多言語テキストを対象とする機械翻訳の技術など、 応用面からもこの分野の重要性が高まっています。情報という、人間ぬきには議論 できない対象を研究する分野では、科学と工学の有効なインターラクションが 不可欠だと思っていますが、この実用面から要請も、分野の発展には良いこと だと思っています。

もう一つは、多分、私の研究生活の間には無理でしょうが、この分野の 最終的な目標は、大脳生理学的な研究と言語の計算モデルからの研究が結び つくことだろうと思っています。最近の話題というよりも、将来の展望という ことですが 。。。。


  • 計算言語学:

       言語(英語、日本語などの自然言語)の持つ規則性、あるいは、言語 によるコミュニケーションの持つ規則性を記述するのに適した形式的な記述系に 関する研究、あるいは、その形式的な記述系で実際にその規則性を記述する 研究。ここでの形式的な体系とは、数学的な体系と置き換えてよいが、主として 計算機科学で発展してきた「計算」概念を中心にした形式的な体系を用いる。

  • 自然言語処理:

    計算言語学での理論を実際に計算機プログラムで実現する 研究、 たとえば、日本語で人間と自然な対話ができるシステムとか、 日本語・英語で書かれた膨大なテキストの中からユーザの要求にあった テキストを同定するシステム(情報検索)とかを作る際の要素的な プログラムに関する研究

  • 機械翻訳:

    対話システム、情報検索と並んで、自然言語処理研究の典型的な 応用システムの一つ。英語から日本語などのような翻訳を行なうシステムの 研究

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Last updated on Monday, May12 1997