計算における時間の短縮およびネットワークによる距離の短縮は、コンピュー タサイエンスにとり最も根源的な課題です。一見速度とは無関係である利便的 機能を提供している場合でも、それを可能とすために必要な計算速度、ネット ワーク能力が前提となっています。従って、コンピュータサイエンスにおける 多くの分野における研究は何らかの形で高速化と結び付いています。

平木研究室における研究の基本テーマは計算の高速化 であり、ハードウェア、アーキテクチャ、基本ソフトウェア、 プログラミング言語、アルゴリズム、アプリケーションなど計算機が 係わる全ての側面から、高速化の研究を進めています。 特に計算機を非常に多数並列に動作させて高速性を達成する並列分散計 算システム、特に並列度の高い超並列超分散計算システムを中心とした研究を 行なっています。具体的な研究項目として:

超並列システムアーキテクチャの研究
1万台以上のプロセッサを持つ超並列計算機システムが効率的かるフォール トトレラントに動作するためのシステムアーキテクチャを求め、数量的に評 価する。


仮想分散共有メモリアーキテクチャの研究 汎用超並列計算機システムにおいて本質的である共有メモリを効率的に実現 するための共有モデル、共有メカニズムおよび性能評価の研究。

同期機構および資源管理機構の研究
高効率なプログラミングシステムおよびオペレーティングシステム実現のた めに必要な同期および資源管理手法の研究およびそのアーキテクチャ的サ ポート機構に関する研究。

超並列超分散相互結合網の研究
超並列超分散計算機システムの要素プロセッサ間を、バンド幅、転送遅延、 実装という相反する要求をみたしつつ結合するネットワークの構成方法、ネッ トワークプロトコルおよびその評価に関する研究。

専用計算システムの研究
アプリケーション分野に特化したアーキテクチャにより、非常な高速性を達 成する方式を求める研究。これまでに、画像認識アーキテクチャ、遺伝的ア ルゴリズム専用アーキテクチャ、遺伝子情報処理アーキテクチャを扱いまし た。

超並列言語処理系の研究
手続型言語の美点を維持したまま超並列システムのプログラミングが効率よ く実現できる言語処理系および超並列アーキテクチャへの最適化を行うコン パイラ技術の研究。

超並列オペレーティングシステムカーネルの研究
非常に高い性能を持つ超並列システムを汎用の計算システムとして使うため に不可欠であるオペレーティングシステムカーネルの基本方式を求める。特に 上記諸項目の高速化/最適化方法を有機的に結合し、システムとして使用する ためにメカニズムの研究と、それに基づくオペレーティングシステムの研究・ 開発をおこなっている。

制約解消系による超並列アプリケーションの研究
制約解消系を用いて、様々な実世界の問題を数値計算に転換して解決するア プリケーションの開発研究を行なっている。現在は、制約解消系により作図を 行なうシステムを扱っている。

を中心に研究を展開しています。研究の手法として、実際のハードウェア製 作を含むアーキテクチャ研究ではハードウェアアルゴリズム実装用のテストベッ トを作成し、 細粒度密結合マルチプロセッサ「お茶の水1号」(600MIPS, 400MFLOPS) を完成させました。

現在、クラスタ間の並列実行を高機能ネットワー クを用いて実現するプロトタイプ計算機 「お茶の水5号」(800MIPS,800MFLOPS) が動作を開始しています。

また、全国の大学の40近い研究室で行われている文部省重点領域研究 「超並列処理」プロジェクトの超並列プロトタイ プ計算機 JUMP-1 の設計製作では中心的な役割を果たしています。このプロジェ クトにおいて、従来型高性能マイクロプロセッサと組み合わせることで超並列 計算機のための汎用ビルディングブロックとなる Memory-Based Processor を 考案し、その機能設計および論理設計を現在行っています。

また、超並列オペレーティングシステム・カーネルの研究では、 実際にワークステーション上で動作するカーネル SSS-CORE を(他のOSの改造ではなく)直接実現して研究・ 開発を行なっています。

平木研究室は、平成8年4月現在、教授、助手(松本)、大学院生9名、研究生1 名で構成されます。現時点の研究設備は、計算環境としてはワークステーショ ンを基本としています。ワークステーション上でハードウェアアーキテクチャ の研究開発を行う最先端開発環境を用意するために、大学の研究室としては珍 しく業務用の基板設計CADソフトウェア、論理設計CADソフトウェアおよ びLSI設計CADソフトウェアを導入している。アーキテクチャ作成のため の実験設備としては、超高速オシロスコープ、ロジックアナライザなど基本的 測定器を備えています。

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<vu@is.s.u-tokyo.ac.jp>

Last updated on Thursday, 3 1997