インタビュー第1弾:佐々木康晴さん(1996年収録)

プロフィール

15期生。現在(株)電通 第2クリエーティブディレクション局勤務。

4/8(月) at 聖路加タワー

中出: まず、今どういう仕事をなさっていますか?

佐々木: 仕事はですね、肩書としてはいわゆるコピーライターです。広告の表現部分を考え る仕事ですね。でも実際には、コピーだけじゃなくて、CMプランナーの見習い的な 仕事もやらせてもらってます。 4月までは研修で、1年間の研修ってことでクリエーティブ統括局ってとこに居るん だけど。

中出: じゃあみんなその局にいくんですか?

佐々木: いや、新入社員のうち、まずクリエーティブに配属になるのは150人中25人程度で す。これは、入ってから研修やって適性をみて決める。で、最初の1年は、その25 人が、ほんとうにクリエーティブとしてやっていけるかどうかの研修をすると。

中出: なるほど。

佐々木: で、一応1年過ぎてまあ何とかなるなっていうことになったので、今いる第2クリエ ーティブディレクション局ってところに行くことになりました。今も、そこで、コ ピーライターをやってます。で、コピーライターは何をするのかっていうと、新聞 ・雑誌広告、ポスターとかの広告文面を考えたり、テレビコマーシャルのナレーショ ンを考えるっていうのが主な仕事。他にも、たまにCF(注1)の企画の仕事もあって、 30秒とか15秒のコマーシャルのネタを考えるっていうこともやる。あとは、新製 品のネーミングとかもやるし、最近はホームページを作るってな仕事もあります。 まあ何でもありますね。 会社に入ってから7月まで全体研修で、その後から現場配属なんで、まだ事実上10カ 月弱しか経ってないんだけど、もう仕事は実戦で、コピーや企画をずっとやっ てます。 今いる局は結構ハイテク関係が多くて、大学時代の専門に近いクライアントが結構 多かったりしますね。ある程度専門知ってる奴じゃないと書けないっていう のもあります。いくら言葉がうまくても、まったく知らない人がインターネットに ついて書いてくれって言われたら、難しいよね。パソコンの広告作れって言われて も、パソコン全然触ったこともないっていう人は書くことできないでしょ。だから そういう意味では専門知ってるということは、すごくプラスになってます。でも、 全然専門と関係ない仕事も半分くらいあるよ。そこが面白いところだよね。

吉羽: そういうクライアントを佐々木さん一人で担当しているのですか。

佐々木: いえいえ。主にクリエーティブの表現案を考えるところには、クリエイティブディ レクター(CD)という部長がいて、その部長の下にCMプランナーっていうCMを考える 人とコピーライターと、あとグラフィック(注2)を考えるアートディレクター (AD)っていう3種類の人がいるわけです。でその人達がチームを作って協力し合っ てネタを練ると。会議してこういうのは面白い、こういうのはつまんないとかって。 だから、まあグループ作業なんだけど、基本的には各職種一人ずつ。コピーライタ ーは1人、プランナーも1人。じゃないと喧嘩しちゃうしね。だってコピーって、 どれが絶対いい、とか言えるもんじゃないんだよね。評価軸がひとつじゃないって いうか。こういう表現がいいですって言い出すと、多分2人入れば2通りできるし 3人入れば3通りできちゃう。だからもう1人が責任を持って作るっていう形が多 い。でも、まだ自分の場合は新人だから、先輩のコピーライターがいて、その下で アドバイスをうけながらやってたりもします。こんなのはどうですかっつって、う ーんこれはちょっと分かりにくいなとかね、話し合いながら作ってる。

吉羽: もう少しやっていって先輩の方とかつかなくでやるようになったら、かなり個人の 責任っていうのは、、、。

佐々木: もちろん責任重大。だけど、それはどんな仕事もおんなじでしょ。今も、たまに1 人でやれっていう仕事がくると、けっこう気合いが入ります。

吉羽: じゃもう佐々木さんが考えたものがそのまま街中に現れて。

佐々木: 例えばグラフィック、新聞広告とかだとADがいるわけですよ。絵を考える 人がいて、で文字を考える自分がいると。でそのADにこんなネタはどうですかとか こういう風に見せたらいいんじゃないですかとかこういう言葉だったらかっこいい んじゃないですかっていう相談をして。だから、誰が考えた、とかいうよりも、 みんなで考えた、という感じですけどね。でも、文字関係で責任を持つのはコピー ライターだからね。キャッチフレーズを書いて、商品を説明する部分(ボディコピ ー)を書いて。この商品はなんとかに優れていてどんなひとにぴったり、とかね。 後はその会社の住所とか電話番号とかを書いて、と。だからもしそこで住所とか電 話番号間違えたら、自分の責任になっちゃう。そういう細かいところもあるし。 もちろん、企画自体が面白くなくて、それで売れなかったらやっぱり自分の責任だ よね。もちろん商品の責任でもあるのかもしれないけど、基本的に売れない商品を いかに売るかっていうのが広告だから。

中出: なるほど。

佐々木: 特に最近はもう例えばパソコンにしたって、どこの会社が出しても変わらないんだ よ、みんなIBM/PC互換機だったりするわけだし。変わんないんだけど、いかに良いも のに見せるか。それで売れる会社と売れない会社が決まっちゃう。そういう仕事だ から責任はあるんだけど、やっぱ面白いよね。人がさ、自分の書いたコピーを見て、 この商品は面白いなって思って買いに行ってくれる訳だよね。新聞に載せるってこ とは、全国の家庭に配られるわけだから、結構たくさんの人が見る機会がある。そ れはすごいことだよね。そんなこと、個人でやろうと思ってもなかなかできないよ ね。だから、それが結構、大きなやりがいになる。

吉羽: 具体的に佐々木さんがやったものというのは。

佐々木: 具体例は、個人的に聞きにきてくれれば教えます:)新入社員の場合っていうのは なんだかんだいって勉強だっつって見てるだけで終わったりするのもあるし、具体 的に会社名を出しにくい仕事もあるし。でも、なによりなんだか恥ずかしい;)。で も、自分の部のクリエイティブレィレクター(部長)が、実際やってみないと勉強に ならないから作ってみろ、って言ってくれて、去年だけでもけっこう作りました。 みんなが知ってるのはあるかな。 誰もが知っている大きな仕事っていうのはね、すんごいお金がかかっているのが多 いんです。ビールのコマーシャルとかしょっちゅう見るじゃない。ああいうのだ と何十億円とかかかってたりして。TVコマーシャルも1本作るのにも、ものにもよ るけど数千万円かかったり。それを半年間流し続けると、ものすごいお金がかかる んです。何億円と。だから、そういうのは、そうたくさんは作れない。

中出: その15秒くらいの時間のために、そんなにかかるんですか。

佐々木: そう。みんながよく見る時間ていうのはやっぱり高い。でも、けっこうデカイ仕事 もやらせてもらいました。いろいろお手伝いしたのは、とある通信会社のTVコマー シャルとか、新聞広告とか、ポスターも 作ったな。たぶん、みんなみたことがあるはずです。後はある医薬・食品メーカー の、スープのグラフィック。たまに新聞のスペースが空くと出たりするんだ。それ はもう完全に一人でコピーをやりました。後はね、そうだなあ、またなにか作った らご報告します:)。今年はたまたま、競合プレゼンが多かったんだよね。それを何 回かやったのがどれも結構大きくて、CF作ってポスター作って新聞作ってドカーン とやる奴だったんだけど、僅差で負けちゃったりしてね。やったんだけど形になっ てないのもあります。残念ながら。

中出: そういうのはある程度作ったのを見せて、じゃこちらでお願いしますっていうこと になったら本格的にいくわけですか?

佐々木: そう。アイデアを見せてそれを買ってもらう訳です。

吉羽: それでだめだったら、他に回すわけにもいかないですよね。

佐々木: うん。その場の勝負だよね。

吉羽: その点きついですね。

佐々木: プレゼンといっても、もちろんちゃんと作るんです。手書きとかじゃなくて、写 真もカラーで貼りつけて、文字とかも写植っていうちゃんとしたのを打って張り付 けたりとか。で、全部コピーを書いてお問い合わせ先とかも一応ダミーで入れて。 で、実物大のボード作ってイラスト描いてと。そうやって持っていく訳だから結構 毎回お金がかかる。プレゼンするのに。それで負けたらやっぱり損害だけど、勝つ のが目標だからさ。プレゼンの準備ってけっこう大変だけど、面白い。やっぱり、 広告も、モノをつくる仕事だから、そう感じますね。

中出: 情報科学科に在学中何をやっていたのか、簡単に教えて頂けませんか?

佐々木: ひとことでいえば、「自分の好きなこと」をやっていました。こんなことを言うと 怒られるかもしれませんが:) 学部のころは、トロンプロジェクトという、コンピュータの面白いところを全部あ つめたようなプロジェクトのなかの、面白そうなところをやってました。BTRONを 使って、使いやすいヒューマンマシンインタフェースを考えたり、今のJavaの先駆け (と思うことにしている)のようなシステムを考えたり。CコンパイラをTRON仕様チッ プに移植する、なんてことも大きなテーマだったと思います。 でも、とくに興味をもってやっていたのは、やっぱり、インターネットまわりかも しれませんね。私にとって、WWWとの出会い、MBONEとの出会いは衝撃でした。後半 は、そっち関係ばっかりを勉強していました。

中出: 今の佐々木さんの生活の中で、情報科学科にいた時にやったことで役に立っている ことはありますか?

佐々木: この会社がすごいのはね、けっこう大きな仕事でも、チャンスがあれば若い人にや らせてくれるんだよ。よく新入社員のうちは下働きばっかりでなんにもやらせないっ ていう、それはなくてさ。お前はコンピュータの専門家だったんだからやってみいっ て、結構でかい仕事をガンとくれるわけ。結構びびるけど。この間も、あるアーティ ストのライブをインターネットで中継するっていう仕事があったんだけど、自分も そのプロジェクトにからませてもらっ て、そのアーティストの家にIndyを置くっていう話から、どうやってイベントを実 現するか、っていうところまで、新入社員のくせに、ずいぶん深いところまで関わ らせてもらったんです。 こうなると、もうクリエーティブだとかいう枠を越えてるわけね。専門家だから色 々意見聞いてやろうということで、いろんなところで活躍するチャンスがある。も ちろん、コピーライターとして活躍するチャンスも得られる。そこが、でかい会社 なのにすごいところで、個人個人を大切にしてくれるというか。

中出: 割とじゃあ1人1人の個性を見て。

佐々木: もともと、すごい個性持っている人が多くて。なんとかなら任せろっていう人が多 いよ。たまたま俺は情報関係だったから、情報関係ならこいつにやらせてみようかっ ていうことになってます。広告屋だから、もう情報科学とは関係ない仕事をしている ようだけど、意外とそうでもない。インターネットだったりとか通信関係とかコン ピュータ関係とかの企画には、やっぱり専門が生きるんだ。生活もあんまり変わっ てないしね。:)大学の頃は昼前に来て、研究室に行ってだな、castorというマシ ンの前に座ってだな、でメールを読みーのニュースを読みーのしてGCCの移植をしなが らだな、まあなんかちょっと論文も書かなきゃなーとか思いながら、でもなんだか んだ言ってMboneで遊んじゃったりする毎日だったけど、今も大して変わりなくて、 午前中遅めに会社に来て、1人1台Macがあるからそれのスイッチを入れてメール読 んだりニュース読んだりして、コピーも書かなきゃなーとか思ってコピーを書きな がら、でもインターネットで遊んでしまうというのが今の生活だからあんまり変わ らなかったり:)

吉羽: これからの情報科学科に期待することはなんですか?

佐々木: 情報科学科のみなさんに期待するのは、情報科学以外にも、何かやりたいことを持 つ、ってことじゃないかな。情報科学科の人って、純粋にコンピュータが好きな人 が多いんだけど、それ以外に向けられたエネルギーが、もっとあってもいいよね。 そうすれば、それと情報科学をからめて、もっと何か新しいことができるかもしれ ないじゃん。コンピュータの中だけで閉じてたら、できることにも限界があるよね。 別に、広告だって何だって構わないんだけど、何かやりたいことを持って、それに 情報科学をはめこめば、もっともっと、情報科学って、面白い学問になるんじゃな いかな。ドロップアウトした奴が、エラソーなこと言うのも何ですが:)。

中出: 本日はお忙しいところ本当にありがとうございました。

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(注1)CF

コマーシャルフィルムの略。ようするにTVコマーシャルのこと。

(注2)グラフィック

新聞・雑誌広告、ポスターなど、平面媒体にのる広告のこと。

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プロフィール
在学中にいた研究室、卒論、修論、おもな研究テーマ等について。

学部のときも、修士のときも、坂村研究室。共通して興味のあった研究テーマは、 「ヒューマン・マシン・インタフェース」。いかにして、人が使いやすいコンピュ ータをつくるか。いかにして、情報を人にわかりやすく伝えるかに興味を持って いた。

卒論:
「グラフィカルユーザインタフェースの音声による解説手法」

最近フツーになってしまったGUIは、実は視覚障害者にとってとても使いにくい。 かといって、視覚障害者には専用のソフトを作ればいいじゃん、という考え方では、 ソフトのコストは高くなるし、健常者との共同作業がしにくく、ますます視覚障害 者を疎外することになってしまう。そこで、この研究では、従来のGUIを、たとえ ば野球のラジオ中継のように、そのまま音声の解説に変換する手法について考察。 視覚障害者に無理矢理GUIを使ってもらうのではなく、GUIの画面の状況を理解して もらうことを目標にして、既存のGUIを効率よく音声解説に変換するルールを決め、 評価を行った。

修論:
「プログラマブルインタフェース手法によるデータフォーマットの拡張」

簡単にいえば、今の Java の先駆けのようなシステム(ほんとかな)。ネットワ ークを介してデータをやりとりするときに、データと一緒に、機種に依存しないプ ログラムを送り付け、それを受け取った側に評価させることで、データを解釈する インタフェース自体を拡張し、通信を効率良く、高機能にするシステムを設計。具 体的に図形エディタ等を実装して評価した。これだけ聞くとほんとに Java み たいだけど、あれよりも1年以上も前だったかな。セキュリティやら言語仕様や らをもっとちゃーんと作っていれば、けっこう面白いシステムになったと、大学を 離れて今になって改めて気が付いて、ちょっと悔しい思いをしている(?)。