情報科学科の先輩に聞く!

第3回 授業で何をつかめるか

ワケわからんがオモシロい

――実際に入ってみてどうでしたか?

岡野原 まずは、指導陣の顔ぶれですよね。「ワケのわからんことをやっている先生がいっぱい。これはおもしろい」と思いました。世の中にはこんなにコンピュータのことを知っている人がいるんだ、こんなにマニアックなところを突き進んでいくんだ、と。

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西鳥羽 コンピュータはいろんなことができてすごい、と思って情報科学科に来たんですが、『計算量理論』などの授業で「こんなにもできないことがたくさんあるんだ」とびっくりしました。たとえば、「巡回セールスマン問題」という有名な問題があります。セールスマンが所定の数の町を一巡する際の最短経路を求める問題なんですが、巡回先が40か50で求められなくなる。「えっ、そんなこともできなかったの」と。

岡野原 ところが、条件がちょっと変わるとその問題が簡単に解ける。その境目、問題の難しさが変わるようなところが、ちゃんと理論で裏づけられているんですね。進学して知りました。

西川 僕は、コンピュータのアーキテクチャの授業が印象的でした。ハードウェアに触れる機会って、あまりないじゃない。普通はFPGA※1は買わないし、スパコンなんか触れないし。クラスタも自分で買うには高い。いろんなアーキテクチャに触れられたのがおもしろかった。

※1 FPGA:ユーザーが独自の論理回路を書き込めるLSI。『CPU実験』では、FPGAを使用してオリジナルのCPUプロセッサを設計・製作する。

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岡野原 僕は機械学習——人工知能の一分野に関心があるんです。人に正解のデータ、「これはスパム」「これはスパムじゃない」などというデータをひたすら与えてあげると、機械のソーターが自動的に抽出する。そういう機械学習の分野は、自然言語処理、画像処理、バイオといった非常に広い分野で使われるかなり普遍的な技術になっています。僕が授業を受けたころは、ちょうど技術の黎明期を少し過ぎたくらいで、「こういう可能性があります」と教えてもらいました。それが実際に動くこと、そしてきれいな数学的な枠組みがあることに興味を持つようになりました。

西鳥羽 『CPU実験』も思い出に残りますね。情報科学科ならではです。

西川 あれは、おもしろかったね。コンピュータを仕事にするならCPUくらい作れないと、と思います。実際にやるとたいへんだけど。

岡野原 フフフ、たいへんだったよねぇ。僕と西川は同じ班だったんです。ところが、途中からCPU担当の西川がネットゲームの世界に行ったきり戻ってこなくなっちゃった。ほかはできあがって、みんな「CPUができないから困ったなぁ」って。

西川 僕はあのとき「人の心は脆弱だ」と知ったよ(笑)。

岡野原 ようやく年末近くなって西川のエンジンがかかり、「ライバルチームには絶対に負けたくない」と猛烈にがんばって改良を重ねました。いまこうして会社をやっていると、あの実験の延長線上にいるような気持ちになることがあります。なんだかんだ言っても、西川は最後にはちゃんと責任もって期日どおりなんとかしてくれる。

西鳥羽 結局、学部で学んだことはすべて、いまの仕事に通じているんですよね。