情報科学科の先輩に聞く!

情報科学科OB座談会「情報のグローバリゼーション」世界が舞台のスゴイ先輩たちが語る“モノ作り”の世界

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第3回 モノ作りと情報科学

意外に必要な歴史を見る眼
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――ほかに情報科学を学ぶ「優位性」みたいなものは、あるんでしょうか?

清水 僕は、情報に関する技術全般の鳥瞰図を獲得できることじゃないかな、と思っています。実は僕、博士課程在学中に悩んだ時期がありまして……本郷には通っていたけれど、図書室にしか来なかった。海外の技術論文を毎日2件くらい読んではノートにまとめていた。

特別な目的があったわけではないんです。きっとヒマだったんだね(笑)。いまになって、あれはひとつの旅行だったんだなと思うんですよ。誰でも最初から見知らぬ土地の地図が描けるわけではないですよね。旅をしていろいろなものを見て、あとから振り返ってみると地図になっている。情報科学科で学ぶということは、そんな感じに近い。気づいたら情報技術の全体像や歴史、研究の流れをつかんで、上空から見る鳥瞰図のようなものを手に入れている。情報科学科で過ごす時間のなかには、技術やテクニックを得るだけではなくて、情報の本質を自分なりにとらえていく時間もあるんだと思います。

――情報科学と情報工学の違いについてはどう考えますか?

鎌田 その質問は、学生の頃によく先生方から投げかけられたなぁ。「情報科学にはサイエンスが入っていなくてはならない、これはどうサイエンスなんだ?」と聞かれました。

清水 夜中に学生同士で議論したりもしました。

鎌田 情報は自然現象で、それをどう解析・活用してモデル化していくか……。

飯沢 そうそう。「プログラミングに熟達するだけではサイエンスではない。情報を解析・活用してモデル化、具体的にアブストラクション(抽出)するのが情報科学だ」と。

清水 工学になるとそこに“効率”の言葉が入ってくる、と僕は解釈してました(笑)。

飯沢 情報科学科で身に付くスキルというと、第一にプログラムのスキルですよね。これはものすごくアップできます。情報科学科はそれだけではなくて、アブストラクションを考えてモデル化することまできっちりと指導してくれるから、情報の本質をつかむことができるんです。だから、第一線で幅広く活躍するスキルが身に付けられるんだと思います。

清水 そのスキルで重要なのは“惑わされない客観的な姿勢”じゃないかと、僕は思うんですよ。先ほどの鳥瞰図の話とも関連するんだけれど、ご存じのように情報技術の進展は速くて、盛衰が激しいです。ところが、廃れかけた発想や技術が復活してくることもしょっちゅうあります。

鎌田 最近プログラミングではマイナーとされてきた関数型言語(HaskellやOCaml)が流行っていますよ。あれは清水さんが手がけているマルチコアCPUが出てきて、並列化の流れがあるからでしょ?

清水 そうでしょう。昔注目されたデータフローマシン、あの発想の復活などもありますよ。こういうトピックが出現してきたとき、情報科学的な鳥瞰図を手に入れていると、一から検討しなくてもいい。目先の流行り廃りに惑わされずに、客観的に対応できます。すると、的確にトレンドをキャッチアップして先行したり、マイナー技術をすくい上げたりができるようになるんです。