本文へジャンプ

  • HOME
  • 講演会情報

講演会情報

Coalgebraの理論: 「システムの数学」に向けて
講演者:蓮尾一郎(京都大学数理解析研究所,JSTさきがけ)
平成22年6月30日(水)14時〜15時30分 理学部七号館214講義室
1990年代の Jacobs と Rutten の諸結果に始まり,状態遷移システム(たとえばオートマトン) の圏論的モデルとして成功を収めつつある coalgebra (余代数)の概念について,概説します.最近盛り上がっているいくつかのトピックについて手短に紹介しますが,ポイントは圏論 (「なんでも矢印で書こう!」というフォーマリズムです) の持つ抽象力です.計算機科学における,一見異なるいろいろな現象の共通する本質をとらえて,「同じもの」として記述することができます.

一例として,後半の時間を使って「軌跡意味論と模倣関係の一般理論」に関するわれわれの結果を紹介します.双模倣関係 (bisimilarity) が集合と関数の圏 Sets における coalgebra でとらえられる,というのはよく知られた結果ですが,軌跡意味論 (trace semantics) は「内部の分岐構造を気にしない」という点で双模倣関係よりも粗い同値関係です.圏を Sets から Kleisli category と呼ばれるものに取り替えることで,軌跡意味論がやはりcoalgebra を使ってとらえられることを示します.われわれの一般理論について特筆すべきなのは「分岐の種類」 (たとえば非決定性 vs. 確率的分岐) がパラメータになっていて一様に扱えることです.このおかげで,非決定性システムに対する既存の結果を確率的システムに対して「移転」することができます.

圏論 (category theory) については「聞いたことはあるが,よくわからん」という方が多いかもしれません.そういう方こそぜひ聞いてみてください.