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計算機の中のカタチを現実世界へつなぐ

最近は、物理シミュレーションをいろいろなところにどんどん活用していらっしゃいますね。

ええ。それまではコンピュータの中の形を扱ってきたけれど、現実世界のこともやろうと思ったんです。物理シミュレーションは、現実の世界に何か形あるものをつくるのを手助けするために使うようになりました。それで、画面の中でつくったクマも、手に取れるぬいぐるみや風船にして、実世界に出すというふうに発展したんです。

機械のエンジンをシミュレーションするといった物理シミュレーション自体は、昔からありました。僕らがやっていることは、その場で編集してその場で結果が見えるようにすること。そこのところが新しいんですよ。

鉄琴はもっと自由なカタチでいいじゃないか

最近の研究を、いくつか紹介していただけますか?

これは、コンピュータの手助けで新しい鉄琴をつくる話です。鉄琴は普通、同じ幅の鉄片が規則的な長さで並んでいて、それで音階どおりに音が鳴ります。でも、これまでにない形、おかしな形の鉄琴を好きなようにつくりたい。もちろん、これを叩いたらドの音、次を叩いたらレの音、というようにちゃんとした音階で鳴るように。でも、鉄片をヘンな形にしたらどんな音になるかわからないので、叩いたらどんなふうに振動するかを物理シミュレーションしているんです。周波数を計算して、実際にピッピッという音程を確かめられるようにしました。

実際に制作した鉄琴鉄琴の板の形を編集

鉄琴の板の形を編集するエディタ。叩いたときにどんな音程になるか、シミュレーションで教えてくれる。板の形を変形するにつれて、音程が変わっていく。

オリジナルチェアをつくる

設計システムを使って製作した椅子

これまでにない独自の椅子も、簡単にデザインできますよ。画面に、こんな椅子がほしいってするするするっとスケッチを描くでしょ、背もたれが高いのとか……。それだけで、もう設計ができてしまいます。あとはできたデータを、レーザーカッター―ちょうどプリンターやプロッターに出力する感覚でレーザー光で木やアクリル板を切る機械があるんですが、そこに出力してやります。で、切り出された部材を組み立てると、椅子ができます。

木を切る前には、物理シミュレーションによって人を座らせたらどうなるかを確認できます。足の付け方が悪いとバランスが悪くて、ほら、座ると倒れちゃう。設計データが椅子の立体モデルになっていますから、いろいろなことができるんですね。身長を入力して、椅子のサイズを体形ぴったりに調整することもできます。

お揃いのデザインで、大人用の椅子と子ども用の椅子ができるわけですね。体重を入力すると、椅子のフレームの本数が変わるとか?

ええ、ええ。それは今後の予定です!(笑)

椅子のデザインから力学シミュレーションまで

診療に役立てる

国立循環器病センターとの共同研究で、医師が患者への説明に使用する心臓の模型ソフトウェアもつくっています。心臓の構造に何か問題があるとき―たとえば心臓のどこかに孔があいていたり、心室をつなぐ血管が本来と違うところでつながっていると、お医者さんは患者や家族に病状と手術の方法を説明することになります。患者さんの病状はひとりひとり違うので、いまは紙に手描きで絵を描いているんです。でも、何段階もある手術の手順を描くのは時間がかかるし、それを見てもなんだかよくわからない。

そこで、最初にここと向こうをつないでバイパスし、次にそっちとあっちをつなぐ、という具合に手術の手順を示し、その結果心臓がどう働くようになるかをリアルタイムに見せてあげたい。心臓はパイプとポンプで構成されている水流システムですから、そういう構造を簡単に編集できて、水流をリアルタイムに見せられるようなシミュレータがあるといいんですね。手術の経過につれて変わっていく血液の流れも、自動的に計算して見せているので、元は酸素の少ない青い血液が動脈血に混入して送り出されていたものが、だんだん全身に赤い血液が行くようになることが見てとれます。

《流体系スケッチシステムを使った心臓手術のシミュレーション》
心臓は、ポンプ室とパイプからなる流体系システムだ。いかに簡単な操作で流体系システムの構造を編集し、水流シミュレーションをリアルタイムに見せるかがポイントになる。

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