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CGは映画の夢を見る

先生のスライドはきれいな絵ばっかりで、ちっとも数式がでてきません。ずるいと思います!

だって、普通の人に数式使ったら嫌われちゃうもの。五十嵐先生の講演だって、式はでてこないよ(笑)。

本当は、数値計算を駆使しているんですけど。1万元の超大きな連立方程式を解いたり、もくもくと形を変えていく雲を計算するために、流体力学で使うナビエ・ストークス方程式を解いたりと、さんざんやるわけです。

でも、最後になにかカタチあるものがでてきたら、やっぱり嬉しいじゃない。僕たちCGソフトウェア開発者のアルゴリズムで、ハリウッドのものすごい映画ができて、世界中のたくさんの人が楽しんでいるのは素敵でしょ。数学は、好きな絵をだすために勉強して力がつけばいいんです。

いま紹介していただいたCG技術が活きるのは、やはり映画でしょうか?

ハリウッドの映画はものすごくコンピュータを使っているし、トップランナーのCG研究者が製作にかかわっています。映画は、CGの有力なお得意さんといってよいでしょう。

でも実は、「見える仕組み」「物理現象のシミュレーション」の追求は身近なところにも活きています。僕らの研究室でも、光学機器や視覚活動に密着した日常的な応用へつながっています。

映画への寄与ということでは、2010年に南カリフォルニア大学のポール・デベヴェック教授がアカデミー賞の科学工学賞を受賞しました。『アバター』に使われた人の表情をつくりだす技術が認められて。ぼくらの分野も、アカデミー賞を取れるんです。

そのすこし前の2008年には、流体シミュレーションツールの開発に参加した坂口亮さんも同じ賞を受賞していますね。

日本のアニメはそれほどCGを活用していないし、ゲーム業界も多くは海外のCGソフトウェアを買ってきています。でもそのソフトウェアには、僕らが考えだして論文で発表してきたアイデアや手法が採り入れられているんです。ソフトウェアというと舶来の技術に目が向きがちですが、実は日本発祥の技術が世界中のCG創作に活きているんですよ。もっと自信を持ってもいいと思います。

西田先生が考えるCGの研究の魅力はなんでしょうか?

なんといっても、結果としてきれいな絵がでてきて楽しいこと。できたものは、言葉の壁を超えて世界中の誰もが楽しめますから。僕は、いちばんここちよい研究テーマだと思っています。エンターテイメントにかぎらず、応用が広いのも魅力ですね。

CGは、科学とアートをつなぐかけ橋になっていると思うんです。ルネッサンス時代の巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチは、絵を描くために絵の対象となる人や動物の仕組みを研究してたくさんの解剖図を遺しています。ダ・ヴィンチは、画家であるとともに、多彩な方面に関心を持つ科学者でもあったんですね。科学とアートの間に垣根がなかった。時代が下って、いつのまにか理系だとか文系だとか細分化された専門家の時代になってしまいましたが、CGという映像表現の技術は、科学とアートを融合してふたたびもとの姿をとりもどしているんじゃないかな。

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